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ファシリテーションの秘伝のタレ - 失敗から学んだ実践的改善法

マネジメント アジャイル

はじめに

こんにちは!新卒でバックエンドエンジニアをしています izumin です! チームのミーティングでファシリテーションを担当することになったものの、なかなか議論が盛り上がらず、時間ばかりが過ぎていく…そんな経験はありませんか?

私自身、チームのスクラムイベントであるレトロスペクティブでファシリテーターを務めた際、うまくいかずに悩んだ経験があります。しかし、先輩からのアドバイスを受けて改善に取り組んだ結果、劇的にミーティングの質が向上しました。

この記事では、私が実際に経験した失敗とその改善方法を、すぐに実践できる具体的なテクニックとともにご紹介します。

失敗体験:議論生まれず深まらない

状況

45 分の枠で実施したレトロスペクティブで、チーム内で先週の KPT(Keep・Problem・Try)をそれぞれが出して共有するという形式でした。基本的に私が「〜さんお願いします」と順番に話を振っていく流れで進行しました。

発生した問題

1. 時間管理ができていない

各セクション(K・P・T それぞれのトピック)毎のタイムキープができておらず、議論が必要なトピックを足早に進めたり、逆に重要でない話題に時間を使いすぎたりしてしまいました。

2. 議論が全く深まらない

以下のようなやりとりで議論が停滞してしまいました:

Aさん:「先週は積極的にAI活用できたが、レビューのリソースが足りないかも、と思いました」
私:「いやそうですよね〜、どうすれば良いんですかねぇ」
(沈黙...)

この結果、場がシーンとしてしまい、後半はあまり活気が出ずだらけてしまう感じになりました。

3. 自分の意見をほぼ言っていない

ファシリテーターは話を広げたり議論の流れをコントロールすることが求められますが、自分の意見(自分の意見がなくても話を振るなど)を述べて話を広げることで議論を活発にし、まとめていく必要があります。

自分の意見をほぼ言わない結果、「先週の K として〜」と話者が話し終わった後に数秒の沈黙が発生していました。

4. 要約への過度な確認

議論の内容を要約する際、その要約が合っているか不安で、全て「これで大丈夫ですか?」と確認していました。結果的に誰かのリソースを取ってしまうし、単純に面倒ですよね笑

実践的な改善テクニック

シゴデキな先輩から以下のようなアドバイスをいただきました。

1. タイムスケジュールと管理

前倒し気味のスケジュール設定

  • 5 分〜10 分程度前倒し気味でタイムスケジュールを設定する
  • 時間オーバーのリスクを下げるため

定期的な時間の共有

  • 「あと ○○ 分しかないですね」と定期的に伝える
  • 全員が時間を意識して会話できるようになる
  • 「ここは他の人と重なるのでスキップで大丈夫です」といった流れを生み出せる

2. 議論ポイントの仕分け

重要トピックの事前ピックアップ

  • KPT の内容を事前に確認し、議論に時間が必要なものをピックアップ
  • ピックアップしたものは最後の方に時間を割く(想定外の議論で焦らないため)

話題の種類別対応法

話題を以下の 3 つに分類して対応する:

発散したい話題

  • 様々な人の意見や疑問を募りたい話題
  • 話者に話させてから自分でサマリーして OK

共通認識を取りたい話題

  • 話者に話させてから自分でサマリーして OK
  • 重要:全てのトピックに対して「これで以上で大丈夫ですか?」と聞く必要はない

課題解決したい話題

  • 時間配分の重きを置いて、ネクストアクションの提示を自ら行い、ベストアンサーに繋げる
  • この時間で全てを解決するのは無理!と思って OK
  • すぐ解決できないとわかったら、レトロ以外の場での解決や一旦持ち帰って案を持ち寄る流れを促す

3. ファシリテーター自身の積極的参加

自分の意見を積極的に発信

  • 議論の火付け役としての役割を果たす
  • 沈黙を恐れず、自分から話を振る
  • 質問を使って参加者の意見を引き出す

効果的な声かけ例:

  • 「自分はこうだと思っていますがどうでしょう?」
  • 「これあまり認識できていないのですが、どういうことなのかもう少し詳細を教えていただきたいです」
  • 「〜さんはこれについてどう思ってますか?」

4. サマリーへの自信とスピード感

過度な確認を避ける

  • 要約に 100%の正確性を求めすぎない
  • 「間違っていたら訂正してもらえる」という前提で進める
  • 確認は本当に重要な部分のみに絞る

改善後の実践結果

上記のアドバイスを基に、同じチームでレトロスペクティブのファシリテーションを再度行いました。

1. タイムキープを上手く行えた

セクション(KPT それぞれのトピック)毎のタイムキープを上手く行え、45 分の制限時間を守ることができました。前倒し気味でタイムスケジュールを設定した上で、深掘りたいところとそうでないところの取捨選択を行えました。

2. 議論が活発化した

3 つの話題分類を念頭に置いて議論を進めた結果、何に時間をかけるか、深めるかの取捨選択ができました。特に「課題解決したい話題」では、この時間内では話すべきではないと判断して、別の場での話し合いを設けるようにネクストアクションを明確に提示することができ、円滑な議論の進行ができました。

実際の進行例: A さん:「生成 AI の活用が活発化したのは良いですが、レビューリソースの懸念があります」 私:「このレビューリソースの問題は重要ですが、エンジニア間での議論となるので、後のエンジニア相談会で話し合いましょう」

3. 意見の数が増え、自分発信で議論が発生した

積極的に自分の意見や疑問を発信することで、チーム全体の議論が活性化し、以前のような沈黙がほとんどなくなりました。同時に、他のメンバーも積極的に意見を述べてくれるようになりました。

4. スムーズに進行できた

自分のサマリーに自信を持って次のトピックに移れたので、円滑に次のトピックに移ることができました。「間違っていたら訂正していただける」と振り切って自信を持ちました。

具体例:「以上の話より、つまり〜ということですね。では次の K は〜」

まとめ:効果的なファシリテーションのポイント

事前準備編

  1. 前倒しタイムスケジュール設定
  2. 議論が必要な項目を見極める
  3. 発散・共通認識・課題解決の話題毎に対応を変える

進行中編

  1. 定期的な時間共有で全員の時間意識を高める
  2. ファシリテーター自ら議論をリードするため、積極的に発言する
  3. サマリーの過度な確認を避ける

マインドセット編

  1. 完璧を求めすぎず、間違いは訂正してもらう前提で進める
  2. 沈黙を恐れない。適切な間も必要です
  3. 自分がタイムキーパーでもあることも意識する
  4. ファシリテーター自身も議論の参加者であることを忘れない

おわりに

ファシリテーションは経験とコツが重要だと思いますが、今回ご紹介したテクニックは比較的すぐに実践できるものばかりです。

特に「前倒しタイムスケジュール」と「自分の意見を積極的に発信する」この 2 つだけでも、会議の質は大きく向上します。

皆さんもぜひ自チームのミーティングで試してみてください。きっと今までより活発で有意義な時間になるはずです!