根拠を持って「辞める」を選択する
目次
|green: ### はじめに
開発プロジェクトにおいて、「途中で辞める」という選択肢は心理的な抵抗を伴うものですが、時にはそれが最も合理的な判断となることがあります。
「バッチがあれば便利だよね」 — 最初はそんな軽い気持ちで始まったプロジェクトでした。しかし、しっかりとメリット・デメリットを分析することで、最終的に 「辞める」 という結論に辿り着くことになります。
本記事では、「GCS 上の不要リソース削除バッチの開発」を中止した実体験を通して、以下のポイントについて詳しく解説します
- メリット・デメリット分析の重要性
- 正しい判断を下すための Tips
- 心理的な抵抗を乗り越える考え方
💡 伝えたいメッセージ
「辞める」ことが良いのではなく、根拠を持って選択することが重要だということです。
|green: ### 1. プロジェクトの背景 🚀
課題の発見
私がアサインされたのは、GCS 上に溜まった不要なリソースを定期的に削除するバッチの開発でした。
|yellow: 💭 最初の印象: 「バッチがあれば便利だし、コスト削減にもなるよね」
初めてのバッチ開発ということもあり、着手前に徹底的にタスク分解を行いました。この段階では、まだ 「やる前提」 で計画を立てていました。
- 調査フェーズ: バッチ実装の背景、考慮事項、不要なリソース発生パターンの分析
- 設計フェーズ: シーケンス図作成、ドキュメント化
- 実装フェーズ: 方針策定と実装
発見した課題
調査の結果、不要なリソースが発生するパターンは5 つのパターンがあることが判明しました。当初は、これらすべてを一括で削除するバッチを開発する予定でした。
⚠️ 詳細な調査を進めるうちに、「本当にこれは必要なのか?」という疑問が湧いてきました。
|green: ### 2. メリット・デメリット分析
コスト削減効果の検証
(💡 ここで初めて、具体的な数字を調べることにしました)
✅ メリット
- コスト削減: 全サービス(Cloud Run、Cloud SQL 等)に対して GCS が占める割合は数%程度
- 私のプロダクト: 約 200 円/月
- 大規模プロダクト: 数千円/月程度
|yellow: 😅 正直な感想:「あれ?思ったより削減効果が小さい…」
❌ デメリット
- 誤削除によるインシデント
- 復元不可能になる可能性がある(GCS は削除されても一定期間保持してくれるが、それ以上経つと完全削除される)
- 考慮漏れや設定ミス、ロジックミスの可能性
- 誤削除時の復元作業に手間がかかり、完全には復元できない
分析した結果、数千円のコスト削減に対して、インシデントリスクが大きすぎることが判明
代替案の検討
次に「そもそも不要なリソースを生成しない」アプローチを検討しましたが、こちらも同様の問題が浮上
- 工数対効果が見合わない
- インシデントリスクを完全に排除できない
|green: ### 3. 意思決定プロセス 🤔
客観的に状況を把握し、意思決定する
自分の判断が偏っている可能性を考慮し、以下の取り組みを行いました。
- 一度時間を空けて冷静に分析
- 経験豊富な先輩方に相談
- 第三者的な視点での意見収集するために AI に質問
チームでの合意形成
先輩方からの助言を得て、考えや方針を固めることができました。結果として、チーム全体が「プロジェクト中止」の判断に賛成してくださりました。
💭 心理的な抵抗との向き合い方
正直な気持ち 😅
- 「最後までやり遂げたい」という強い気持ち
- 「辞めます」と言うのは恥ずかしい
しかし…
チームのリソースが限られている中で、現在・将来を考えて何が最善なのかを優先して判断しました。
|purple: 🎯 重要なポイント:個人の感情よりも、チーム・プロダクトの最善を優先する
|green: ### 4. この経験から得た学び
1. 「何となく」から「根拠ある判断」への重要性
最初の考え: 「バッチがあれば便利だし、コスト削減になるでしょ」
分析後の結論: 「コスト効果とリスクを天秤にかけると、やらない方が良い」
|purple: 💡 学びのポイント:最初の直感だけでなく、できる限り定量的な情報で判断材料を揃えることが重要
2. 客観性を保つための仕組み
一人で判断せず、時間を置く・先輩に相談・AI に質問など、多角的な視点を意識的に取り入れる
3. 感情と論理の使い分け
個人の感情(やり遂げたい、恥ずかしい)よりも、チーム・プロダクト全体の最適解を優先する判断力
|green: ### まとめ
この経験を通して、「辞める勇気」も大切なスキルだということを学びました。
「無駄なリソースをバッチで削除したいね」というふんわりと始まったプロジェクトが、しっかりとした分析により適切な判断に至った—— これこそが、根拠を持った意思決定の価値だと実感しています。
今後も、常に数字と事実に基づいた意思決定を心がけていきたいと思います。